ギャンブル依存症に悩まれている方は、まずは自分の頭の中で何が起こっているのかを理解し、自分で認識を持つことによってギャンブル依存症からの回復を一緒に目指していきましょう。
私自身もギャンブル依存症に悩まされており、
- 使うはずじゃないお金を使い果たしてしまった
- 借金を繰り返してしまった
- やめたくてもやめられない
等の悩みを長年抱えながら生きてきました。
実際のところギャンブル依存症である私たちが、依存症から「再生・回復」するためには、どのような手段がとれるでしょうか。
- 病院やカウンセリングを受診する
- 同じ悩みを持つ者同士の自助グループへ参加する。
- ギャンブルをできない環境を作り、ひたすら我慢
どの方法もギャンブル依存症からの再生・回復の手段として非常に有効であると思います。
それと同時に、ギャンブルをやりたいという渇望と闘わなくてはなりません。
そうしたときに支えとなるのが、まずは自分自身をよく知ることです。
自分でも何故こんなにギャンブルをしたいのかというのが理解できていないということも多いです。
まずはこの記事を読んでいただき、ギャンブル依存症の脳がどうなっているのかを理解いただければと思います。
人がギャンブルに熱中してしまうのは何故か?
サルの破壊実験を通して何を思うか
サルの破壊実験と呼ばれているものをご存じでしょうか?
有名な話なのでどこかで見たり聞いたりされたことがある方も多いと思いますが改めてご紹介させてください。
私は初めてこの実験の話を見たときに正直恐くなりました。まさに私も含むギャンブル依存症の話だと思ったのです。
サルの破壊実験とは・・・
パターン1.ボタンを押すと必ず餌が出てくる箱を用意する。
それに気がついたサルはボタンを押して餌を出すようになります。
サルは 食べたい分だけ餌を出したらその箱には興味を無くしてしまいます。
腹が減ったら、また箱のところに戻ってきます。
パターン2.ボタンを押すと餌が出たりでなかったりするように設定する。
この場合、サルは一生懸命そのボタンを押すようになります。
次第に餌が出る確率をだんだん落としていっても、サルは一生懸命ボタンを押し続けるそうです。
ボタンを押し続けるよりも、他の場所に行って餌を探したほうが効率が良いぐらいの確率になっても、サルは夢中でボタンを押し続けるようになってしまうそうです。
動物の脳に刻まれている本能とは
サルの破壊実験の他にも有名なものとしてパブロフの犬の実験があります。
犬にベルを鳴らしてえさを与えると、ベルを鳴らしただけで、犬がだ液を分泌するようになる。
どうしてこのような現象が起こるのでしょうか。
動物がこのような条件反射をしてしまう事、餌(「報酬」(ご褒美))を得られるプロセスを学習する事には、脳内でドーパミンという神経伝達物質が分泌されることと深い関わりがあるようです。
この学習という面において、
- 毎回必ず報酬が得られる事を学習する事を「連続強化」
- たまにしか報酬が出ない事を学習する事を「部分強化」
と定義されています。
上でお話ししたサルの破壊実験では、パターン1の「必ず餌が出る時」よりパターン2の「たまに餌が出る」時の方がより多いドーパミン量が分泌されるそうです。
部分強化にはストッパーがかからない?
毎回「報酬」を得られる連続強化に対しては、脳内でセロトニンやGABAという指揮官のような存在のホルモンが
「ここらへんでやめておけ」
「もうやりすぎて飽きただろ」
とストッパーの役割を果たしてくれることにより、やり続けることによって徐々にドーパミンが出ないように調整してくれます。
一方で部分強化の場合には、今回報酬をもらえるかもらえないか分からないというランダム性により、上手くこの指揮官達がストッパーの役割を果たすことができないそうです。
ドーパミンは「報酬」よりも「期待」でより多く出る
ドーパミンは「報酬」そのものを得られた時よりも「期待」している時の方が多く出るという研究もあるそうです。
パチンコの例
パチンコを打っている最中にいきなり熱い演出が出た時に感じる「大当たりが来るかも?」というドキドキしている時や、大当たり中にこのまま連チャンが続いたらいくら儲かるだろうという「期待」を感じてる時の方が、実際に景品を換金してお金を受け取った時より興奮している(ドーパミンが多く出てる)気がしますね。
競馬の例
予想通りの展開や、本命にした馬が良い感じの位置どりで最終コーナーを回ってきた時の直線コースは、競馬をやっていて一番ドキドキする瞬間ではないでしょうか。
本命の馬が先頭でゴールを駆け抜けた時もドーパミンが出ている気がしますよね。
実際に報酬である「お金」を受け取った時よりドーパミンは間違いなく多く出ているはずです。
パチンコと競馬の例を出しましたが、このように「報酬」をもらう前の「期待」の段階でドバドバと大量のドーパミンが分泌されてしまう状態は、まさに「パブロフの犬」と同じような状態と言えそうです。
ギャンブルに依存してしまう脳とドーパミン
ギャンブル依存症の脳内は常にドーパミンが足りない!?
意外に思われるかもしれませんが、ギャンブル依存症の脳は常にドーパミンが不足してしまっています。
「さっきまでの話だと、ギャンブルでドーパミンが大量に出てるから、脳の中はドーパミンであふれているんじゃないの?」
そんな声が聞こえてきそうですが、
人間が1日に分泌できるドーパミンの量には限りがあるそうです。
日常的にギャンブルをしていると、どうしてもドーパミンの分泌が一般的な人よりも多くなってしまい、ドーパミン不足になってしまいます。
依存から抜けられないのは、慢性的なドーパミン不足から
人間はドーパミンが不足している状態だとより強い刺激を欲するようになってしまいます。
ドーパミンが不足していることを喉がカラカラの状態に例えてみます。
一般的な人が、喉が渇いてきたと思って水を飲めば満足できるとします。
依存症に陥っている人(ドーパミンを常に欲している)は、
水じゃ物足りない
⇒オレンジジュースを飲むようになる
⇒オレンジジュースじゃ物足りなくなり、より刺激の強い炭酸入りのコーラを飲む
⇒コーラでも物足りなくなり、アルコール入りのビールを飲むようになる
ギャンブル依存症はドーパミン不足の状態から、より強い刺激を求めるようになってしまいます。
はじめは少額のギャンブルで快楽・満足を得られていたのが、いつの間にか大金を賭けたギャンブルをしないと満足できなくなってしまいます。
ドーパミンが出にくくなっているのでより強い刺激じゃないとドーパミンが出なくなってしまっている状態です。
これは、依存症になってしまった人の意思が弱いというわけでなく、人間の脳がこういう仕組みになっているという事をご理解いただきたいと思います。
他の事に使うべきドーパミンが全てギャンブルに使われる
ギャンブル依存症がギャンブルにばかり夢中になってしまう原因として、ギャンブルでドーパミンを消費しすぎて、他の事に無関心・無気力になってしまいがちという事も原因の1つとなります。
人間の分泌できるドーパミン量には、人それぞれの限度があります。
その大半をギャンブル依存症はギャンブルで消費してしまっているため、他の物事に使うためのドーパミンが足りないという事になってしまいます。
極端に言うと
「ギャンブル以外の事を楽しめなくなってしまう」
という事につながります。
他の趣味や、人との交流、食事、健康管理などへの興味やそこに使うための体力・気力が無くなってしまい、心のすき間を埋める為にギャンブルを再びやってしまうようになります。
私の場合もそうでしたが、情報などに触れ「やってみようかな」という気にはなるのですが
- お金もないし
- 疲れているし
- 時間もないし
という言い訳を自分にしてしまって、結局行動に移せないという事が過去に沢山ありました。
まとめ
今回は、ギャンブル依存症の脳内でドーパミンがどのように作用し、何故なかなか依存から抜けられないのかという事をまとめさせていただきました。
まずは人間の脳がギャンブルにはまってしまう理由をご説明いたしました。
- 動物はこういう過程で餌(報酬)を得られるというのを学習する
- 報酬がたまにでるというランダム性に、脳のストッパーは機能しにくい
- 「報酬」そのものより「期待」でより多くのドーパミン発生
そして人間の脳が次第に依存していってしまう原因をご説明しました。
- ドーパミンが慢性的に不足していることによりより強い刺激を求める
- 他の事に使うためのドーパミンをギャンブルで使ってしまう
- 無気力・無関心になり、ギャンブルばかりやる悪循環
人間の脳がどうしてギャンブルにはまり、依存していってしまうのかという事を少しでも理解していただけたら幸いです。
「どうして自分は」こんなにダメなんだと、自己嫌悪にならずに、脳の仕組みがこうなっているから、依存していってしまっているのかという事を認識できれば、依存症からの再生していく上での心の支えにもなっていくはずです。
あきらめずに依存症を克服していきましょう。